木村敏の『異常の構造』を久しぶりに取り出して眺めた。知人が、著明な精神科医である木村敏の書物を勧めていたので、この本を含めて何冊か持っていたのだけれど、最近はとんとごぶさたしていた。
私は正確に読みこなすことができないから、著者が挙げるいろいろな症例を見て、面白いとか、大変だな、とか思うだけである。ただ、自分がどうして自分たりうるのか、という、考えても仕方がない問題をそれでもなお考える上で、いろいろな材料を与えている、とも思うのだ。
勤務先では、自分の意に沿わないことでも、スケジュールで決められたようにされている。そこで、関係者に働きかけて、言葉を発し、依頼し、説得したりすることがある。そのような働きかけが一段落してふと我に帰ると、今振り返っている自分と、さっきまで言葉を発していた自分は異なるのではないか、と思うことがある。正確にいえば、振り返る自分を落ち着かせるために、違う自分だと思い込ませているのだ。
こうした状況を、木村敏なら、また他の精神科医なら、どう考えるのだろうか。